ささまる血風帳

140字にまとめるのが苦手

閉店間際のショッピングモール

ささです。

6月13日(日)、今晩は月曜日を迎えるのがそれは恐ろしくて、僕は布団にくるまって「絶対出勤拒否防衛圏」を構築することに勤しんでいるだろうから、日記代わりのブログをちゃっちゃと更新して「何もしなかった日曜日」の烙印を回避することにする。

そもそもなぜ「日曜日を終える」などという恐ろしいイベントにエンカウントするために休みを始めなければいけないのだろう。終わることが分かりきった幸せに、いつかは捨てられる空っぽな笑顔を向けながら、無我夢中でキーボードを叩いている僕はひどく滑稽だ。

とは言っても「何もしなかった日曜日」から「ブログを書いた日曜日」への格上げなんてものは言ってみればベーコンレタスバーガーがベーコンレタスチーズバーガーになったくらいの上昇値なので、その実、費用対効果に全く合っていないのであるが、それはそれとして僕は普通にチーズが好きなので、頑張ってベーコンレタスバーガーにチーズを乗せることにする。

ちなみにサムライマックが終わってしまったことは誠に遺憾だ。僕はあれが好きだった。

ハンバーガーとポテトの話などどうでも良いのだ。本題は僕の好きな雰囲気の話である。

昨今のショッピングモールは時勢も相まって、それは閉まるのが早い。9時にはモール内のどんな店も開いてないし、それどころかところどころ電気が落とされていたりして、洋服店のマネキンが不気味に薄明るく照らされていたりもする。のっぺらぼうの親戚とみまごうほどである。怪異とは身近に存在し得るものだと聞いたことがある。

幼少期の僕はあの雰囲気をそれは怖れたもので、家族で外食をした帰りなどに翌日の買い物のためにデパート等を訪れると、母の尻にかじりついてまんじりとも動かなかった。大抵そういう時の僕はポケモンパンを買ってもらえれば機嫌を直す。あの日に出たベトベトンのことは忘れられない。

ちなみに尻にかじりついてと言うのは比喩でもなんでもなくて、風呂に入れてもらった時に母の尻を噛んだことがあるという。その頃から輝かしい助平の片鱗を見せていたのだと思えば随分と心温まるエピソードではないだろうか。

母の尻をかじる話はここまでにしておいて、どうして人のいないショッピングセンターをあそこまで怖がったのだろうと考えてみると、「人がいるはずのところに人がいないから」だという考えに至った。

人が居て当然のデパート、終電後の深夜にすっかり人の消えてしまった大通り。あの空間は世界から浮いていて、そこに居ると元の世界に戻れなくなるような、そんなある種の浮遊感、非現実感を怖がっていたのだと思う。あと普通に薄暗くて怖い。

「好きな雰囲気の話」と銘打っておいて意味の分からない話の流れになっているが、怖がっていたのは昔の話で、今ではすっかりあの雰囲気が好きだ。

予測もつかない論理展開でお気付きだろうが、僕は奥ゆかしい男なのである。逆説的な物言いで読者の視線を引かんがためにこのような論法を取っているのであって、寝起きだの、何も考えてないだの、そんなことではないのだ。僕は奥ゆかしい男なのだから。

それと似たような雰囲気でいくと、夜の人がまばらになった空港も好きだ。あれほど広くて明るい空間に人っ子ひとり居ないと、ベンチに座って前屈みで顔の前に手を組みながら「…俺が消したのさ」とボソリと呟くだけで「消滅系能力者ごっこ」が出来て楽しい。もしかしたら当時付き合っていた恋人にはそれを見られたせいで振られたのかも知れない。僕の「理想」を分かってくれないとは、馬鹿で愚かな女性だ。しかし僕は心が広いので、いつか世界の人間を「選別」する際には彼女は生かしておいてやろうと思う。これが日本快男児のあるべき姿だ。ますらをぶり。まじますらおぶり〜!もしこのブログをJKが見ていたら、「まじますらおぶり〜!」が瞬く間にインスタ上を席巻し、朝の情報番組で取り上げられることになるだろう。なんかマジカルラブリーみたいで語呂がいい。意味は特に決めてない。

閉店間際のショッピングモールみたいな雰囲気の話から相当逸れてしまったし、何かしらの解が出せた訳でも無いが、僕はあの「人の声が遠くに過ぎ去った感覚」がとても好きだ。これは決して厭世観とか「ニンゲン、ニクイ…」みたいな悲しきモンスター的思想から来ているものではない。最近はそうでも無いかも知れないけれども、昼間は人でごった返していたショッピングセンターが、夜になるとがらんとしてしまっている様は、一種の哀愁を伴って僕の目に映る。今だったら朝が来ればまた人が来るけれども、いつかはそんなことも無くなる日が来る。

「朝になれば人が来る」夜のショッピングセンターの風景と、「もう2度と人が来ない」夜のショッピングセンターの風景は同じである。

幼い日の僕はそれを思って泣いたのかも知れないし、ただただベトベトンのデコキャラシールが悲しくて泣いたのかも知れない。でも今ではベトベトンのことも夜のショッピングセンターのことも好きだ。

布団に転がってベトベトンの話をしているといつの間にか11時である。無為な1日を過ごして死にたくなるのはまっぴらごめんなので、まずはマクドナルドにでも行ってこようと思う。よくよく調べてみるとベーコンレタスチーズバーガーなる品物は存在しなかった。仕方がないからベーコンレタスバーガーで我慢することにする。というかベーコンレタスバーガーにそもそもチーズが乗ってた。

それでは。

 

かしこ