この文章はサウナから出て5分で書き始められました
目が覚める。
朝の11時。誰が何と言おうと朝なのである。
目が覚める、とまるで長い眠りから覚めたかのような書き方だが、この男は3回起床に失敗している。8:30、9:30、10:00、そして11:00。
どれだけ寝てもあり得ないくらいに眠い。2回目の起床時には目を覚まそうと桃色絵巻を眠い目で眺めたけれど、眠気が勝った。この4年間の社畜生活の中で、僕の中での三代欲求の勢力図は大きく歪んでしまったようだ。おっぱいを見るより布団を見る方が興奮する。
4連休の2日目。今日という1日を怠惰の奔流から守らなければ、間違いなく「持って行かれる」。
布団の中で眠い目をこすりながら『アイドルマスター シャイニーカラーズ』の市川雛菜ちゃんの豊かな胸部を眺めるだけで終わらせるには、社会人の4連休はあまりに貴重だ。
幸い外は晴れているし、自転車にでも乗りたい気がする。自転車とは言っても、電動自転車だが。俺の魂は汚れてしまった。純真無垢にチェーンをギシギシと鳴らしながら懸命にペダルを踏み締めていたあの頃のパッションはもう戻ってこない。
そうだ。
サウナに行こう。
サウナほど好き嫌いの別れるものはないと思う。
好きな人は狂ったように好きだし、
嫌いな人は「臨死体験w」などと新しい世界に踏み出せない自分を棚に上げて揶揄する醜態を晒す。阿呆である。そのまま汗腺にゴミを詰まらせて何らかの代謝に影響を及ぼしておくがいい。
僕はサウナが好きだ。
もちろん気持ちいい云々もあるが、
それ以外にも好きなところはたくさんある。
そんなことを思いながら自転車で春の陽気を感じながら、サウナのあるスーパー戦闘へ漂着する。
それまでに結構色々あった。

パスタを食べていたら4月からの人事云々で上司から電話がかかってきたり(僕は有給真っ只中である)、システムのリカバリ方法について緊急で電話がかかってきたり(僕は有給真っ只中である)、そういうのを全部「休みなので!」で割り切れると生きやすいのだろうが、別に仕事に優先するほどプライベートを謳歌出来ている人間でもないので、なあなあで無賃金労働に勤しんでしまった。
洗い流す。
汗腺から何もかも。
まず、入館してからというもの、
下駄箱に靴を入れるための100円玉がちょうどないことに気づく。
どうせ返ってくることも多いのだし、そろそろこの辺もQRとかにしてくれないかなと思うが、靴を放置しておけるほど治安のいい地域に住んでないので、小走りで入浴券を買い、入浴券を買ったら当然自分のところへ来るはずだと待ち構えている受付の女性をスルーしてそそくさと下駄箱に戻った。
いやお金いらんやん。
お金がいらないタイプの下駄箱であった。
下駄箱にお金が必要だから、という大義名分のもとで受付をスルーした僕の足元が崩れ去った。
ただの奇人である。
そんな僕にも受付さんはタオルセットを渡してくれた。本来受付をスルーして靴箱へダッシュする奇人に貸すタオルなどないはずなのに。
サウナは優しいのである。
まずは服を脱ぐ前に、脱衣所の自販機でリアルゴールドを飲む。
喉乾いたな、と途中で感じると一気に体験としてサゲポイントが増す。声優ライブの最後の方で腹が痛くなるのと同じくらいのサゲポである。基本的に僕はそうなる。ほぼ条件反射である。
リアルゴールドが身体に染み込んだのを確認したのちに、世界で最も自由な姿(全裸のことである もちろんタオルは巻く)となり、浴場という大平原に降り立つ。
テーマパークに来たみたいだぜ。
テンション上がるなぁ〜
テンションが上がったので、まず身体と頭を洗う。
これからサウナに入るのに二度手間に見えた君は、トーシロである。
毛穴をおっぴろげてんでしょうが!
身体を綺麗にすることによって、汗の出方が全然違うのである。プラシーボって言われても構わない。違うもんは違うのである。
髪を洗い、水気をいい感じに取って、いざ着サウナである。……同じタイミングで、歴戦のおじさんが入室した。
挑んできたのか!?
デスマッチを!?
同時入室の人間がいると、そこはかとなく退室しづらくなる。
なんか負けた気がする。
早く出たら心の中で嘲られる気がする。
サウナに行ったことのある人間あるあるである。
互いに全く敵意のないデスマッチが開催されるのだ。
これを読んでいる各位は、人がサウナに入ろうとしている時は少しだけでも時間を空ける優しさを持ってやって欲しい。
かくしてデスマッチをギリギリで制した僕は、水風呂1分、それから運良く空いていた日向の『整い椅子』に座る。

参考
前に鎮座していた人間の汗を洗い流し、虚な表情で寝そべる。
空が青い。
こんな青かったっけ。
地球温暖化とか環境汚染とか、
よくわからんけど空は綺麗だ。
心臓が大きな音を立てる。寝そべっている自分の身体を見ると、拍動と共に肌の表面がわずかに動いている。
人間ってシステムすごくないか?
賢者ぶってるわけでもなく、本気でこんなことを思うのである。
サウナに関わると、人はやたらと寛容になる。
コワモテのお兄さんがドアを持っててくれたり。
水風呂で飛沫を立てないようにゆっくり水を浴びてくれる人に会釈したり。
優しい人間、現代社会で失われたように喧伝される、人の善性にたくさん触れられるのである。それが、サウナが好きな理由でもある。
もちろんサウナ室で喋るやつには人中に握り拳を献上したい。
そういうわけで少し肌寒くなって、そういえばまだ3月だったなと思い返し、湯船に浸かった後で僕は第2ラウンドに突入したのだった。
一度汗腺が開いた後のサウナもこれまたオツなものである。
こうして、『独身限界男性の日常』と銘打った猫ミーム動画のような僕の1日が幕を閉じるのだった。
普通に辛くなってきたな。寝ます。